「置いてかれちゃうのかと思った」


付き合ってもいないのに、全力でかわいこぶってそんなことを言ってみる。

「お前とは話したいことたくさんあるからな」

彼は見た目以上に、性格は全く変わっていなかった。

彼なりのニコニコで時々こっちをちらっと見る。

照れ屋かよ。

帰路を歩きながら5年間を埋めるように2人にあった出来事を話した。


どんなことしてたの?
楽しかった?
私のこと覚えてた…?

最後のはあっちから聞いてきた。


「俺の事覚えてた…?」

私は頷きながらも迷っていた。

もしも彼が私を、実は忘れてたんだよね、なんてこと言われたらきっとショックだから。

しかし、ここは正直にいこう。


「忘れるときなかったし」

と言って下を向いた。


恥ずかしい事を割とまじめに言ってるけど、きっと彼にとっては何でもない言葉だろう。

「俺も 忘れたときなかった」

反応的に顔をあげてしまった。

ドハといると何時もそう。

目を合わせたら逸らせられなくなる。

気がついたらもう彼の胸の中で。


急に韓国語で喋り出すドハ。

「俺、お前に会いたかったんだ ずっと。でも、離れていても考える事は同じだったな」

そう、5年前の空港でも同じようなことを言っていた。

『離れていても心はひとつだからな!』

私はずっと泣いていたからあの時の風景は思い出せない。

だけど、彼の声は今でもしっかりと耳にも頭にも胸にも響いてる。

「ずるいよ…いつもいつも」

涙もろい私にとって、ドハは最大の敵。いつも泣かせてくる。

それは、意地悪だったり感動だったり。
様々だけど、それでもドハといる時がいちばん幸せを感じられる時間だった。

勝手に両想いだと思ってた。…ずっと。