やられた、と感じた。

今の言葉は反則だろう。一は思わず顔を手で覆った。

こんな顔、誰にも見せられない。
駅構内は忙しそうに行き交う人で溢れており、誰も一のことなど見ていないだろうけれど、それでも今、自分がどんな顔をしているのか簡単に想像がつく一は平然としていられなかった。

「もしもし?ハジメくん?」

「先生さ……」普段臆病なくせにたまにびっくりする程恥ずかしいこと言うよな。そう言いかけて一はやめた。
代わりに待ち合わせ場所を指定する。

地元じゃないと言っても県内だ。
しかもここは中心街。

学校の教師と生徒である一達が堂々と会うことは出来なかった。

財布には父からもらった一万円がある。

一は昔家族で一度だけ行ったことのあるホテルの名前を口にした。

少しだけ間があったが、樹里はすぐに「わかった」と言い電話を切った。