動揺した視線を父に向ける一を見つめて父はくすりと笑みを漏らした。

煙草の煙りが漂う。

「お前のその目は俺にそっくりだけど、肌の色や髪の色は嫌味なくらいあいつに似てるよ」

そう言うと父はまだ長いままの煙草の火を消し、伝票を掴んで立ち上がった。

そんな父を見上げる一に思い出したようにポケットを探ると父は財布から一万円を取り出して一の前に置いた。

「今はとりあえずこんだけしかないけど勘弁してくれよ。残りはお前の口座に振り込んどく。郵便局の通帳、持ってるだろ?アレのハンコはリビングの戸棚の1番下の引き出しに入ってる」

一は何も答えなかった。
これ以上この父にかける言葉が見つからなかった。

「お前も男なら女に金出させるような真似すんなよ。俺が言えた義理じゃねーけどな」

家にいた時とはまるで別人のように颯爽と歩いていく父の背中を蹴り飛ばしてやりたかった。