昼休みになると色とりどりのお弁当が祥子の机に並ぶ。

そういう性質なのか、昔から祥子の周りには人が集まる。
愛されキャラ、といえば自画自賛しすぎて引かれるかもしれないけれど、祥子は生まれてこの方、一人ぼっちというものを味わったことながなかった。

誕生日にはたくさんの友達や知り合いからプレゼントを貰い、昼休みにはこうやって皆が祥子の机に弁当を持って集まってくる。

だから祥子にとって季節外れの転校生は異質な存在だった。

「ねえねえ。芹沢ってお姉さんいたっけ」

母の作ったしらす入りだし巻き卵を口に頬張っていると、唐突に愛が言った。
友達同士でいる時に芹沢の名が話題にのぼるのはそう珍しいことじゃない。

退屈な中学生活の中で新しいものが注目されるのは自然の流れで、芹沢はうちのクラスの新しい存在。

「さあ。あんまり喋ったことないし知らない」

「芹沢って女子に興味ないよね。うちらの存在無視って感じ」

「大悟と仲いいじゃん。祥子大悟に聞いといてよ」

来た。

「んー。わかった。一人百円ねー」

祥子は内心面倒臭いと思いながらも笑顔で掌を皆の前に差し出した。

大悟とは祥子の幼なじみでクラスメイトで、去年の冬から付き合っている彼氏だ。