一はくしゃりと顔を崩して笑った。

それがたまらなく愛おしくて胸が締め付けられる。

キスがしたくなって一の首に両腕を回す。
触れるだけでは足りない。何度触れても足りない。

自分でも信じられない程好きな気持ちが大きすぎて、樹里の中の器はどれだけ水を注いでも満ちることはない。

「先生、ダメだよ」

一のトレーナーをまくりあげようとしたらその手を止められた。

「こういうのはもう、やめよう。少なくとも俺が高校を卒業するまでは」

「……そんなに?」

「うん」

「私、おばさんになっちゃうよ」

「大丈夫。先生なら、おばさんでも、おばあちゃんでも問題ないよ」

一は言いながら樹里の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「たとえ合意の上でも、バレたら先生が捕まるからさ。そんなことになったら俺自分を許せないかもしれない」

一の言い分はもっともだった。
いくら好きでも本当はしちゃいけないことを樹里たちはもう何度となく繰り返してきた。

いつバレてもおかしくない。たまたま今までバレなかっただけの話。

「キスだけなら許してくれるかな……」

「手を繋ぐだけなら、友達でもするし」

「抱きしめるのは?」

「どれも見られたら大問題な気がするよね」