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「ま、まさか、こんな大人になってから、転ぶ時がくるなんて」

いたたたっ、と立ち上がろうとすれば、彼がお姫さま抱っこをしてきた。

「無理して動かない方がいい。このまま帰るよ」

スタスタと早足で歩く彼。

「歩けますから大丈夫ですよ。重いですし」

「そんなことはないよ。雨音、前より確かに体重増えたかもしれないけど。元々が痩せすぎていたんだから。仕事ばかりで不健康な生活送って、やつれていた時に比べれば、今の方が断然いい。それだけ、幸せになっているのかとも思えてくるし。俺との生活の中で幸せに過ごしてほしい身としては、雨音にはもっと甘えてほしいんだ。雨音を幸せにすることこそが、俺の生き甲斐。そうして、雨音の笑顔をそばでみることが出きるなら尚も良し。雨音以上に大切なものなんて、他にないよ。怪我した時だけじゃなく、疲れた時も、俺を頼って。外に出る時は他の奴らから君を守るために、俺は必ず君と一緒にいるのだから」

「新垣さん……」



※ロマンティックが止まらない台詞を吐かれる中、Aさんの脳内は、散歩中に疲れて歩かなくなったおデブ犬を抱える飼い主を連想させ、胸が苦しくなる次第です。