厨房から、
ロケットのような早さで
大きな男の人が売り場に入ってきた。

カウンターの下で揉み合う私たちを見て、慣れた口調で言った。

「つぐみ、今日のおやついらないんだな。」

厳しい顔で似合わない言葉を放った。




ピタッ。



つぐみさんが手を止め、
すくっと立ち上がった。

「…いるもん。」

良さんという人は、
佐々 新の後ろから、
ひょいっとつぐみさんを抱き上げた。


子どもとお父さんみたいだ。


「大丈夫か?
新とチカちゃん。」

はっ。

私、なんて格好を!!


ばんっ!!
「いて!!」

私は佐々 新を突き放し、
慌てて立ち上がり、
身なりを整えた。