洋菓子屋さんの仕事は、
思ったよりもずっと大変だった。

勿論立ちっぱなしだし、
ケーキを運ぶのは神経も体力も使う。

お菓子の種類は膨大だし、
季節によって違うもの、
その日だけの限定ものもあった。


そして、何よりこの匂いだ。



ただでさえ、嫌いなのに、
濃度が濃い。



極めつけに、
来るお客さんはみんな幸せそうだ。


小さい女の子は特にダメだ。


キラッキラに目を輝かしちゃって、
私にはダメージが大きい。



何とか数時間我慢出来たのは、
販売の責任者、
今朝お会いした可愛らしいお姉さん
水瀬つぐみさんのおかげだ。

私よりもずっと背が小さくて、
可愛らしい顔立ち。
25歳とはとても思えない。

でも、やっぱりプロの人はすごい。


どの方にも丁寧に
かつ迅速に商品を提供していく。

私にも丁寧にひとつづつ教えてくださり、
また的確に指示をくださった。


確かに甘いものは苦手だが、
仕事に集中すればいいだけのことだと
気づかさせてくれたのだ。


だって、
どんなに甘いものを扱う仕事だって、
決して甘いものではないから。


厳しさは、私に必要なものだから。