母は、
うっすらと涙を浮かべ、
小さく震えるように笑った。

「…ありがとう。」

ずきん。
なんだか母を騙してしまったような気がして胸が痛んだ。


こいつのことだから、
私が居候することに
気を遣わせないようにだとか
色々有るのだろうが、
これは、ひどい。

私はむすっとして座った。


だけど、母は嬉しそうに笑っていた。

「嬉しい。嬉しいわ。新くん。」


母がそんなに喜ぶなんて。


「チカさんに受け入れてもらえるよう
努力しますので、
応援してください!お母さん!」

佐々 新が
母の手をとって、
目を輝かせた。

「がんばって!新くん!」

母までがそう言った。



なんだ。この茶番劇。


私はため息をついて、
母と佐々 新を引き離した。


「帰るよ?」
私は佐々 新を引っ張った。

「もう少し、お母さんと話をしましょうよ。」
佐々 新はわがままっ子みたいな声を出した。
全然可愛くない!!




私は、深呼吸をして、
彼に言った。

「お店のこと早く覚えたいからっ!
仕事ちゃんと教えなさいよね!」


お母さん、私、
洋菓子屋さんで働きます!