忍の言葉に逆らうことのできない雪火を見るのは、俺にとって楽しみだったりする。


それは多分雪火も同じで。

俺が忍に逆らえないのを見て、こいつはせせら笑っているんだろう。

逆らえないのはお互い様か。つまりは忍に逆らえる奴はいないってことだ。



「あ、おい。この前貸した百円。そろそろ返さねーと利子付けんぞ」


バッと振り返った雪火。


俺はニヤリと笑った。弱味を握ったような気分だ。



相当前の自販機の時のことを今更ながら思い出した。



『あー…コーラ高いじゃねーか。今五十円しか持ってねーよ…貸せ』


素直に貸して、って言えば貸してやったものを…

ってな感じで今まさにその恨みを晴らそうとしているわけなんだがな。


ちなみに、俺今五十円しか持ってねーな。


「あんなのに利子ってお前どんだけ金に困ってんだよ…」



わかってねぇな。

俺が欲しいのは金じゃない…まぁ貰えるならほしいけど。


一番は雪火の、損したって顔を見ること。そんでニヤニヤと笑うこと。



そんなこと口にしてしまったら、利子どころか元も返してもらえないわけだが。



雪火は渋々とポケットに手を入れた。


常に入れているものなんだろうか。あくまでも一校の理事長なのに。



忍は、そんな俺らを蔑むように見ている。


今にも「あんたら馬鹿?」なんて言葉が聞こえそうだ。