「逃げたんだってな。探しにきた」



随分と他人事だ。

忍の話によれば、本人に何も言わずに無理やり押し付けたとか。


いくらなんでも酷すぎるんじゃないだろうか。


案の定忍は苛ついていて。歯軋りをしつつも、冷静に雪火に近付いていった。



「逃げてないわ…探索していただけよ。まだ馴れてないから」


「誰かに案内を頼めば良かっただろ。あいつとか、暇してたろーに」


「嫌。あんな黒い奴にあの場で声をかけたら、後にどうなるかぐらいわかるでしょ」



大した言われようだな、と苦笑を漏らした雪火。


確かにそうだな。仲は悪くない癖に、明らかに悪く見える。

思春期なのか、最近は話している姿を見かけない。


「そろそろ戻れ、煩くなるからな」



「なら、雪火も」


間をおいて忍が提案したことを、雪火はうんともすんとも言わず、ただ理解しようとしているようで。


でも少し経って溜め息を吐いた雪火の表情は諦めに満ちていて。



「姫さんはこえーなぁ…」



そう呟きながらも、後ろを歩いてくる雪火に「どんまい」と声をかける。


笑いながら。