+×+×+×
背後には顔をあげようとしない女子高生。
前には頑丈に見える無駄に豪華な扉。
…いやもう絵的に可笑しいよな。
「いつまでひねくれてんだよ。その内こけるぞ」
「下を向いてると足元の障害物が避けれるのよ。安全でしょ?」
どうしてこの姫は俺の言葉にやたらと反論してくるのか…
お互いに疲れるだろうが。その分話が長くなるのはわかっているこのなんだから。
_コンコン
音がして姫を見れば、扉をノックしていて。
嫌がってるわけじゃないのだろうか、と意外さを感じた。
…ここが嫌いなわけではないんだろうか。
扉を開けた先には、姫の機嫌を悪くしている張本人が、何食わぬ顔で座っていた。
「雪火」
「…お。お早いご帰宅で」
そう簡単に返した雪火は、すぐに視線を逸らして、書類に手を伸ばした。
…この量はなんだ。
相当サボってないとここまでは溜まらないぞ。普通ならな。
どっちも口を開かず沈黙が続いている。
無論、俺には間に入る勇気などないわけだが。