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「やっぱり…ね」
雪火が小さく呟いた言葉をあえて聞き流した。
多少の疑問はあったし、聞いた方が自分にとっていいんじゃないかとも思った。
でも、今更それを口にしたところで雪火は軽く受け流しただろうし、そこを無理やり聞くような強さを私は持っていなかった。
-大方の予想はつきながらも、何も言わなかった。
きっと、目の前の扉を開けてしまえば、雪火の話にあった弟とやらがいるんだろう。
わざわざ彼らに私を紹介する理由を教えて欲しいくらいだ。
-できることならば、私は面倒なことに関わらず、静かに過ごしたかった。
「いるかー」
「雪火…」
私が心を落ち着かせているというのに、どうしてこうも自分勝手なんだろうか。
自分の家族を紹介ー、なんて。そんなこと私にする必要がどこにあるのか。
先に入っていった雪火が私の方を振り向いた。
-気を抜いてしまったのが運の尽き。腕を掴まれて部屋の中へと引き込まれた。
「あ!噂のりじちょー!」
…噂?
下を向いていて声の人物が見えなかった。
…が、その声の持ち主が雪火の弟ではないことは確かだった。