「そうだったんですか…」

俺が話すのをじっと聞いてくれていた、夷隅。

「でも、それは、会長は悪く無いでしょう? 止めたかったんですよね、母さんと父さんが離婚するのを」

そう言われて、涙が溢れてきた。

「止めたかったんだ……。でも、親父は裏切られたと思い込んでる」

涙を流す俺の頭を撫でながら、夷隅は静かに聞いていてくれた。

「親父と話しがしたいけど、怖いんだ。拒絶されるのが…」

「大丈夫ですよ、会長。焦らなくていいんです。いくら時間がかかっても…」

夷隅がそう言っている時、気持ちがいっぱいになって、夷隅を抱きしめた。

「!?」

「少しだけ、このままで」

最初は驚いていた夷隅だが、俺がそう言うと落ち着いたようだった。