「………」

言いようのない雰囲気が漂う。

リビングのソファーでは、抱きしめ合う、母と男。
それを眺める父。


「……どういう事だ?」

一番最初に口を開いたのは、父さんだった。

「ち、違うの!! これは……!」

必死に言い訳をする母。
しかし、もう遅い。


「どういう事かと聞いている?」

聞いた事もないほど低い声だった。

「見たまんまだよ」

突然、男がしゃべり出した。

「何だと?」

「見たまんまなんだよ、聖」

どうやら、父と男は知り合いらしい。

「零、お前は皆川さんの家に行ってなさい」

恐ろしい程低い声で言った、父さんに逆らえず、大人しく那智の家に向かった。