まずい!

父は玄関の男物の靴に気付いていない様だが、リビングに行かれるとまずいのは、俺でもわかる。

「おかえり、父さん」

少しでも足止めしようと、廊下で父さんに話しかける。

「おぉ、零。入学、おめでとう! 今日は、ケーキを買って来たぞ!!」

「ありがとう」

本来なら、喜ぶべきだが、無理だ!!

「今日は早いんだね?」

どうでもいい会話で父さんを引き止める。

「息子の晴れ舞台だからな。校長に仕事を押し付けてきた」

理事長ー! 何やってんだ。

「そ、そういえば父さん。学校の制度で聞きたい事があるんだけど…」

「後でな。麗奈、ただいま」

父は言いながら、リビングのドアを開けてしまった。