「真琴が今まであの人たちの元で暮らせたのは国の手当があったからだ…。」
聖十の言葉に息をすることさえ忘れてしまった。
「な・・・え・・・?」
「里子を受け取った場合国から給付金がくるんだ…。」
その言葉に部屋中が冷め切ってしまう。
「ま、真琴ちゃんと聖十くん紅茶でも飲む?今入れるわね!!」
麗子が慌ててキッチンに行く。
「どういう……こと……?」
「里子には…国から給付金がくるって……え…?」
頭真っ白ってこのことを言うんだね。
今の私の頭は本当に真っ白。
キャンパスに何も書いていない状態。
「聖十…大丈夫だ。私が責任を持って真琴を育てる。」
そんな中叔父さんの強い言葉が届いた。
「そうしていただけると嬉しいです。僕は勝手に生きていくので。」
「ま、待ってお兄ちゃん!!私は…私はどうすればいいの!?」
そう、私はどうすればいいの?
私に何ができるって言うの?
「……今の親から離れて叔父さんと麗子さんの養子となって暮らせばいい。」
そう言って笑う。
そっか…お兄ちゃんだって自分のことでいっぱいなんだよね。
私がしっかりしなくちゃいけないんだ。
私が…私が…。
里子から養子…。
なんかたらい回しにされてる気分……。
「今日は二人共泊まって行きなさい。」
「…お世話になります。」
頭を下げる聖十をみる。
多分私の心は今、悲しみの青と絶望の黒でいっぱいだ。
「真琴ちゃん、部活の後でしょう?」
ソっと麗子が真琴の体に触れる。
「!…冷え切ってるじゃない!!早くお風呂入っちゃいなさい。」
そう言ってタオルとパジャマをくれる。
「こんなものしかないけど……」
〝ブンブン〝
これ以上にないってくらい首を振る。
「ありがとうございます…。」
お風呂のお湯はあったかくて…
麗子さんや叔父さんみたいにほかほかしてた…。
「これから…どうしよう…」
お湯に顔を近づけて呟く。
叔父さんたちの家にずっといるなんて…迷惑だし。
それに養子なんて…。
たくさんのことがありすぎて頭がついていかない。
部活から帰ると家が火事だし…
私を養子にするとか…。
どうして私はこんなに不運なんだろう笑
悲しすぎて笑えてくる…。
「あ、おかえりなさい。ご飯できてるわよ。」
お風呂から上がると麗子さんがお味噌汁を抱えて話しかけてきた。
「あ、ありがとうございます。あの…お兄ちゃんは?」
どこを見渡しても兄、聖十の姿が見当たらない。
「…出て行った。」
叔父さんが静かに言う。
「えっ!?出て行ったって…どこに?」
「寮に帰ったの…。止めたんだけど…新しい家族の邪魔は趣味じゃないなんて言って…」
「えぇ!?そ、そんな…私電話してきます!!」
カバンからケータイを取り出してお兄ちゃんというリストを探す。
「先にご飯食べちゃいなさい真琴。」
「そうよ。冷めちゃうわよ?」
「麗子のご飯は覚めたら美味しくなくなるぞー」
そう言って笑う。
「…はい。いただきます。」
並べられている肉じゃがに手を伸ばす。
〝パクッ…〝
「美味しい…」
一口、また一口と食べていくうちに段々と涙が溢れてきた。
「…真琴…。」「真琴ちゃん…」
「っ…おいしっ………ですっ……!!」
その味は亡くなったお母さんの味にどことなく似ていた気がした。
泣きながら食べる私の肩にそっと麗子さんと叔父さんは手を置いた。
「大丈夫だ。真琴のことは俺たちが守る。」
「そうよ。何があってもあんな里親のところになんて返さないわ。」
「……うんっ……!!」
精一杯頷く。
ふたりの優しさに包まれるたび私の孤独の心や不安の心が薄れていくのがわかった。