…ウゥ~…ウゥ~……


遠くで消防車の音が鳴っている。


(どこか火事になったのかな……?)


部活帰りの夜、遠くで響く消防車の音を聞きながら思う。


(冬だから火事とか多いしね……)


ウゥゥ~ウゥゥ~


段々と消防車の音が近づいてくる。


(近くなのかな?)


そんなことを思いながら歩く。


この時はあんなことになるなんて思ってもいなかった………。



私の目の前には大きな赤い建物。


「………え………?」


状況がわからない………。


「真琴!!」


そう言って駆けてくる男性。


「お兄ちゃん……」


「怪我はないか!?大丈夫か?」


そういい抱きしめる。


「これ…どういうこと……?」



「……とりあえず、叔父さんの家に行こう。」


兄、聖十(せいと)に手を引かれ向かった先は。


「あぁ…聖十に真琴…無事で良かった。」


「叔父さん…。」


叔父、城内 勘四郎(じょうない かんしろう)の元。


「大変だっただろう。今日はうちに泊まっていくと良い。」


親を早くに亡くした私たちにとても良くしてくれている母方の弟だ。


「真琴ちゃん、良かったわ無事で。」


「麗子さん……。」


勘四郎の妻、麗子。



「あの…叔父さん。」


聖十が真剣な顔で口を開いた。


「なんだい?聖十。」


「あの…頼みがあるんです…。」


「言ってごらん?」


「俺はバイトをしてて……大学の寮で生活ができます。だけど真琴はまだ…。」


「お兄ちゃん…わ、私一人でも大丈夫だよ!!学校辞めてバイトするし!!」


これでも私はお兄ちゃんを気遣ったつもり…だった。


「何言ってるんだよ!!この世の中高校でないと雇ってもらえないんだぞ!?それを高校辞めるなんて…っ!!母さんたちが知ったらどう顔向けすればいいんだよ!!」


〝ビクッ…!!〝


初めて兄の怒った姿に驚いて体が固まる。



「まぁまぁ聖十。」


勘四郎が聖十をたしなめる。


「うーん…そうだね……。今の里親から真琴を奪ってしまおうか。」


「「「………は………?」」」


「ちょっ…!!あなた何を言ってるの!?真琴ちゃんを今の里親から奪うって…」


「そうですよ叔父さん!!いくら里親がひどいからって……」


「叔父さん…いくら叔父さんでもそれは……」


「大丈夫!多分……」


「「「多分かよ!!」」」



~~~~~~数年前~~~~~~


ある女性が病で亡くなった。


32歳の若さで子供二人を残して……。


一人は男児、10歳。


もう一人は女児、5歳。


父親は三年前飛行機事故で亡くなっていた。


幼かった二人は里子に出された。


が、頭の良かった兄は里親に可愛がられていた。