何用か聞いたものの、ほんの数秒の沈黙が流れた後あたしは気まずくなり目線を机の隅へ移した。

「ねえ‥」



声がした方へ振り返るのと同時に、唇に妙な違和感があった。
すぐに今自分が何されているのか察しがつく。

あたしとコイツの視線が絡み合うが、トキメキなんぞの感情なんか湧かない。
自分の目がすっと冷たくなるのを感じた。

行き成りの事に少しは戸惑うが、あたしは手荒くコイツを離れさせた。
「なにしてんの」
「キス」

「そんなの知ってる。なんでしたのさ」

表面上は平然を保てているが内心は、いつもの冷静さを少々保てないでいる。
いきなり顔が近付くとか‥単純に怖いだろう。

「別にいいだろ？　俺、お前の彼氏なわけだし」

そう。
コイツは一応あたしの彼氏だ。
自然消滅したと自分で思っているけど。
むしろ解消したい。

「まだあたしら付き合ってんの？」
「当たり前」

『当然』と言っている様な顔で言われてもこっちは返答に困る。

「女ばっかと遊んでるアンタに言われても説得力ない」
「あ、もしかして嫉妬？」
「まさか」

嫉妬する暇あったらゲームしてるっての。