「やっぱり、素材がいいんだよね」

「あの……」

「もう、化粧のり最高」

「ちょ」

「これで街中歩いたりしたら、渚きっとナンパされまくりだよ。きっと」

「優愛、私の話聞いてよっ!」

「……あ、ごめん。あまりにも感動しちゃって」


私はそういって、笑う。

渚は鏡の前でむすっとしてしまう。

今私と渚は、渚の家にいる。

渚ママは私が来たと、驚いて、ケーキを4つも買ってきた。

渚に友達がいたことがうれしかったのかな。

いいお母さんだと思った。

そのうえ、今日はお泊りまでさせてもらうことになり、本当に感謝。


「私じゃないみたい」


そういって、渚は自分の顔を鏡でまじまじとみる。


「化粧ってそんなもんだよ」


私はそう言いながら化粧道具を片付けだした。


「優愛さ、何企んでるの?」

「渚、少しはこれで自分の顔に自信つけて、先輩に告白くれないかなと思ってやってみたんだけど」

「……こんなんじゃ、カズくんは動じないよ」

「……そんなの、わかんないじゃん」

「わかるよ。何年一緒にいたと思ってるの?」


そういって、悲しげな顔をした渚。


「仮に、自信が持てたとしても、きっとカズくんには私の想いなんて届きっこない」


渚は今にも泣いてしまうんじゃないかって声を出す。

どんなに紗英や里咲に悪口を言われようが、泣かなかった渚が今泣きそうになっている。

こんなとき、なんていえばいいんだろう。