穏やかな話し方が、先生に似ている。

教える立場の人として、このコーチは向いてるんだろうなと思う。


冷静で、平等で。


「空のママ、お綺麗ですしね」


顔をくしゃっとした高田コーチがそんなことを言うもんだから、私は顔が熱くなった。



「でも、空がうまいから良かった。僕が空をひいきしているとかそういう疑いはかけられないでしょ。以前にはそういうこともあったんですよ。僕から見たら才能のある子だったけど、ママ達から見たら地味なプレイに見えたようで、僕が特別扱いしてるって。そのママも若くて、キラキラした感じだったんですよ。結局、いじめられて辞めてしまった。もう、そんなことがあってはならない。子供の未来がかかってますから」


ちょっと感動してしまう話だった。

私だって、高田コーチが理解あるコーチだから良かったけど、違うコーチだったら辞めたいくらいだった。


大人になってからのいじめ、嫌がらせって、あるんだな。



「空には、サッカーを続けて欲しい。僕がずっと教えたいって思ってます。だから、何かあれば相談してください。誰にも言いませんし、トラブルにならないようにしっかりと対応しますので」


「ありがとうございます。心強いです。育成コースに行く方向でお願いします。また正式にお答えさせていただきます」


空は、ヘディングの練習をしていた。

口を大きくあけてボールを頭で飛ばす姿に、涙が溢れそうになった。


大事な大事な私の子供。


空のために、ママは強くなるね。