「じゃあ、始めますか」

先生は、空を肩車したままみんなを集めた。

こういう時、生徒になっちゃうんだよね。

新垣先生と生徒達、みたいな。


白いシャツの襟が程良く立っていて好き。
グリーンにハーフパンツから覗く鍛えられた足も好き。
春なのに、もう夏みたいな先生。

もう日焼けもしちゃってるもんね。

「これ、頂こうか」

シャンパンをあけると、ボンと音が鳴り、空と虎太郎がキャーっと騒ぐ。

「なに?直」

みんなのグラスにシャンパンを注ぐ横顔と、スッと伸びた背筋に見とれていた。
こういう時間もなかなかない。
先生をじっくり味わう時間。

「え?」

授業中の先生みたいな顔って思っちゃった。
何?矢沢、って言う時の顔。

大きく開いた目が子犬みたいでかわいい。

あれ。
まだシャンパンも飲んでないのに、酔ったのかな、私。

「直~!いつものあれじゃない?先生かっこいい~みたいな?」

「そうそう!先生に見とれてたんじゃないの?」

ゆかりと依子に突っ込まれて我に返った私を見て、みんなが笑う。

こういう空気、大好き。


みんながわかってくれてるって安心感。

笑い声を聞いた空が、不思議そうに私に近付く。


「ふふ。バレた?」

私は、空を抱っこして、照れ隠し・・・・・・