不安そうな櫻の目の前で、愛瑠は自分の筆箱を触り始めた。

「いるよ?この人だよ?」

そう言いながら愛瑠が櫻に見せたのは、筆箱のストラップにしているハート型のケースに入ったプリクラの写真。

櫻が見たことのない少年と愛瑠が一緒に撮ったプリクラだった。

「愛瑠はねー?ダンスクラブの三年生の人が好きなんだよ?知らなかった?」

それを聞くと、櫻は自然と笑みが溢れた。

「うんっ!!全然知らなかったよ~?」

良かった…………

愛瑠ちゃんと和樹君が仲良くしてるだけで…………

ちょっと寂しい気持ちになったから…………


「櫻ちゃん?早く仕上げなきゃ。二人が帰って来ちゃうよ?」

「うんっ!!ドレスはピンクで、和樹君の服は黒で…………」


そして絵を完成させた二人は、楽しそうに笑い合った。

「じゃあ愛瑠は修君に渡すから、櫻ちゃんは和樹君に渡すんだよ?」

「うんっ!!」

和樹と修がグランドから帰って来ると、愛瑠が廊下を歩いている修の元に駆け寄った。

「修君っ!!サッカーしてる姿、かっこよかったよ~っ!!これね?愛瑠が書いたんだけど、あげるね?特別にサイン入りっ!!」

「あっ!!ありがとう~!!愛瑠ちゃんって絵が上手いんだね?」

「えへへっ!!愛瑠って絵が上手でしょー?」

そんな二人から少し離れた廊下の隅で、櫻が和樹の前に立っていた。