『俺じゃダメ？』
『俺が、茜を守るよ』
家にいてもずっとこの言葉が私の脳内をかけ回す。
どういう意味で言ってくれたかは分からないけど・・・。
素直にうれしいけど・・・。
何かが私の心の中につまって答えを出せないでいる。
「おはよっ！茜」
「あ、菜々・・・おはよ・・・先に教室行ってるね？」
「え？」
ダメ。
まともに菜々の顔を見れないよ。
菜々の好きな人なんだよ・・・。私のバカ・・・。
それから私は菜々と全く喋れずにいた。
移動教室も休み時間も１人で過ごした。
菜々は、暇そうにゲームをしていた・・・。
ごめんね・・・菜々。
そんなことを思っているうちに昼がきた。
「茜、購買？一緒に行かない？」
「へ？」
「へ？じゃないよ！購買は戦場！ほら、行くよ」
菜々は優しいね。
すごく優しい。
そんな菜々だから言いにくいことだって山ほどあるってのにさ・・・。
「菜々・・・少ないね」
「うん！痩せるよーあははー」
「・・・頑張ってね」
「茜、晴れてるし外行こっか」
私は、菜々の優しさを改めて今感じている。
菜々には報告したいんだよ・・・でもさ、離れてったら１人になる・・・。
怖いよ
『俺じゃダメ？』
『俺が、茜を守るよ』
嵐の言葉も嬉しいんだよ。
でも、嵐が入って来れない領域だって世界には沢山あるよ。
「今日は風があったかいねー」
「うん・・・私も思ったよ」
「そっか！座ろっか、いつものトコ」
「茜、言いたくないならいいけどさなんかあったわけ？
それってさ、あたし関係してるのかな？」
「・・・」
「・・・えっと、無視されてると実はつらいんだよね」
知ってるよ。
めっちゃ知ってるよ。
「だからさ、理由教えてくれないかな？」
「・・・菜々、ごめんね」
「私、告白されたかもしれない・・・。」
「・・・森山？」
「・・・多分・・・。今までとは違う言い方だったから分からないけど
『俺じゃダメ？』『俺が茜を守るよ』って言われたの」
「告白じゃん？」
「・・・うん・・・」
菜々は、ふーっと息を吐いて・・・
「ごめん、知ってたんだよねー森山のコト」
「へ？」
「茜がさ『へ？』って言うときってだいたい想定外だった時だよね」
「あ・・・そうだね・・・」
「森山のコトは今も好き。でもさーラインで聞きすぎちゃったんだよね
告白したいとかするとかいっつも送ってきてさー
お前はあたしの気持ち無視してるのに気付かないのかい！？とか思った」
「菜々・・・」
「そんなコト言っててもあたしは仕方ないから応援してたんだよ！
だから、あたしは今成功しちゃった！応援者としてだけど」
「菜々、本当にごめんなさい」
「何言ってんの？茜ー顔あげて！」
本当にゴメン。
何も知らない私が菜々を無視する資格なんてドコにもなくて
それなのに菜々は優しく本当のことを教えてくれて・・・。
「でも、私・・・嵐のこと好きじゃないよ・・・多分？」
「あっそー？多分ってことはわかんないでしょ！」
「あ・・・そうだね」
「五十嵐さーん！」
・・・この人は・・・
「山本くん？やっほー」
「やっほー！外で食べるんだね」
「あぁ・・・うん。空が好きだから・・・えへへ。なんか恥ずかしいな」
本当はあんまし恥ずかしくない。
えへへ なんて言ってる余裕なんてない。
今すぐにでも菜々の胸に飛び込んで行きたい・・・。
「俺もココで食べよっかな・・・」
「あぁ～」
うそでしょ！？
なんで！？どうしてそうなるの！？
「じゃあ、あたしはアッチで食べる。君ら男子でソコ使っていいよ。
茜、教室行こっか」
「へ？あ・・・うん。じゃあね！山本くん」
「あ・・・うん・・・。五十嵐さん！」
「ん？」
「春輝って呼んでいいよ！」
「へ？」
いや、山本くんでいいじゃん・・・。
「別に・・・いいよ？山本くんで・・・」
「お、俺が呼んでほしいんです！！！！！」
・・・何これ・・・。
「す、す・・・好きなんですよ！４月からずっと！」
「へ！？」
五十嵐茜。
高校生活初の本当の告白です。
「で、茜ちゃんはどうするの？」
「だ・・・だから考え中だってば！」
何度めだろうこの質問。
今は放課後・・・。
そして・・・４月から好きだと言ってくれた山本くん・・・。
告白なんてどうして人はするんだろう。
高校生で付き合って何がしたいのだろう。
少し特別な関係になるだけなのに、それの何がいいの？
山本くんとは最近喋ったばかり・・・。
なのに、どうして私の事知ってるの？
「茜、森山が一緒に帰りたいって言ってるけど？」
「な、菜々・・・。あ、わかったよ・・・ありがと」
(茜、考えなさいよ・・・本当に帰りたかったらメールとかするでしょ・・・
まったく、騙しやすいんだから！もぅ！)
「嵐？」
「え！？ど、どどどどど・・・どうしたの？」
「へ？・・・一緒に帰りたいって聞いたから・・・」
「え・・・あ！うん帰りたかった！待ってね！今、ちょっと勉強しててさ」
・・・ん？
もしかして菜々の嘘？
「ねぇ、本当はまだ学校にいたかったんじゃないの？」
「え？何を言いたいかはわかんないけど・・・どしたの？」
・・・ごまかしすぎ！
ってか・・・嵐・・・
見た目と性格合ってなさすぎだよ・・・。
優しい口調とは裏腹にカッコイイ外見。
コンタクトにはまだ不慣れなのか少し目をこすったりしていて・・・
こすり終えた後の嵐の目は
・・・すごく輝いてるんだ。
そんな細かいところにいちいちドキってきてしまうんだよね・・・私。
「嵐・・・私・・・今日ね・・・」
「告白されたんでしょ？」
「へ？」
「聞いちゃった・・・ってか見てたけど・・・。」
み、見られてた・・・！？
恥ずかしい・・・！恥ずかしい・・・。
「茜に選ぶ権利はあるから俺は何も言わないけどさ、俺も・・・
茜のことが 大好き だから 」
突然の告白に私はビックリして嵐の顔を確認した。
嵐はピンク色の頬を手で隠していた。
それを見て私は確信してしまった。
嵐は本当に私のことがすきなんだ・・・。
「返事はさ・・・できるようになったらでいいよ。」
「へ？」
「・・・いや、ごめん。今、おれがかっこつけたかったから・・・」
「あ・・・うん。」
嵐、私・・・恋愛なんて初心者なんだよ。
告白する人の気持ちも全然わからない。
友達でいいじゃん！って思う人だよ？
それなのに・・・どうして嵐は私の事好きなの？
顔？
・・・男って顔で選ぶって聞いたことがあった・・・。
嵐もその一人なの？
そんなことは・・・思いたくないな。
「茜、公園行かない？」
「・・・へ？・・・どこの？」
「昔、よく遊んだところ！」
そう言った嵐はすぐそこに見える公園に走って行った。
私は今の嵐を知らなかった。
全然・・・
『変わりたいって思ったんだ』
コレって私のためだったのかな？
あんな派手な外見にして・・・さ。
「嵐ーー！」
私は駈け出した。
「私ね！嵐に聞きたかったことがあるの！」
「ん？」
そう言った嵐の目は優しくて懐かしかった。
「私の事、好きだとしたら・・・どうしてそんなに変わったの？
私は嵐の真面目な姿でも仲良かったじゃん？」
「僕じゃなくて・・・俺はさ茜に気づいてほしかったんだよね」
「へ？」
「茜と同じ高校っていうの実は知ってたよ。掲示板に下の方にのってるしね。
茜が気づいたのは俺が順位を落としてから、
俺はずっと気づいてたよ？
子供のころよりも綺麗で大人っぽくなって、でも子供みたいに笑う茜を。」
・・・なんて返せばいいんだろう。
「茜は気付かないって事がわかって女子から『あの人、最近いいよね！』みた
いな会話をしてくれれば『ん？』ってなって気づいてくれると思ったから」
「・・・私、綺麗じゃない。可愛くもない」
「みんな、顔で選んでるわけじゃない。茜の性格を見てるんじゃない？」
「喋ったことのない人に告白されても？」
「見てるよ。きっと・・・茜の事」
・・・優しい。
ドキドキと鳴りやまない鼓動はさっき走って来ただろうか。
でも、喋っている息は全くきれていない。
ドキドキ・・・
「茜、夕陽が綺麗！」
「へ！？写真、写真！！」
カシャ
夕陽の写真なんて沢山ある。
でも、嵐とみたこの夕陽はいつもとは違う夕陽だと思ったんだ。
家に帰った私は、嵐にメールを送った内容は・・・
ラインのアイディー。
嵐のことが好き？
・・・嵐といた時間が長いせいか山本くんからの告白を忘れていた。
「あっ！山本くん・・・」
もし、嵐とつき合ったらこのキンホルダーもはずさなくちゃいけないのかな？
女ってヤキモチとか嫉妬やくってきいたことあるけど、
男の人ってやくのかな？・・・ぅうん・・・わかんない。
茜：菜々、男の人ってヤキモチとかやくのかな？
菜々にラインを送った。
できるだけ、嵐に告白されたことがわかんないように・・・と思ったけど
菜々：あぁ～やくやくーやいたときの男子ってめっちゃ可愛いよ～！
それより、何？森山に告白でもされたのか？
ば、バレた。
菜々はこの一文で分かるの・・・！？
スゴっと思っていた1秒後に・・・
菜々：森山から、告白したってきたんだけど、嘘はついてはダメよ。
はい・・・。
本当にそう思った。
茜：嵐から告白されたのは・・・本当ですよ・・・。
でも、山本くんからもらったキンホルダーをさ、嵐と私がつき合ったらは
ずさなくちゃいけないのかなって
これで全部言った！
菜々：外すでしょ！当たり前。当たり前。
そんな好きならさ似たようなもの買ってこい！
ええええええええええええええ！？
菜々：茜もさ、いい加減気づきなさいよ？
茜 ：何を？
菜々：森山の事を好きってこと！
だから自然に想像しちゃってるわけでしょうが！
私、嵐の事・・・すき？
ドキドキっていう鼓動は・・・走って疲れたからではなく
嵐の事を好きだから？
・・・確かに、嵐が輝いているーとかそういうのは思ったことがある。
優しい目で見られると懐かしい記憶を思い出すこともある。
イジメられていた頃を話すと、守るって言ってくれたこともある。
それに実際にドキドキしていた自分がいることも分かっていた。
・・・スキ？
茜 ：また明日話すね
菜々：りょーかい。あたしも会って話したいからね(｀･ω･´)
最後に送って来た菜々の絵文字は、なんとなく
何かを決めた菜々の表情なのかな？と考えてしまう私がいた。
