菜々と私はその日のお昼、中庭のイスでご飯を食べることにした。

嵐の言葉のせいで・・・菜々とは正直今喋りにくい。
菜々は、どう思っているのかわからないけど気にしていないとは言っていたものの今も・・・さっきも冷たい表情は変わらない。
まるで、何かを決意したかの・・・表情。

会話の無い日なんて久しぶり・・・いや、初めてかもしれない。
でも、「どちらかが喋らないとこの空気は・・・。
菜々は口を開くのはご飯を食べるため、今は喋ろうとすることで口を使いたくないように感じる。

「・・・菜々、さっき山本くんとかぶってたね」

どうでもいい、こんなこと。
それでも、『そうなんだよ~』とか一番いいやすい会話だと私は思った。
けど、菜々は違う。

「今、あたしノれる気分じゃないんだ」
「ごめん・・・」

やっぱ、怒ってるじゃん。
気にしないって言うのも好きになってしまったら・・・っていうことも全部ウソに近いじゃん。
やっぱり、そんな心の広い子なんていないんだよ。
菜々が悪いんじゃない。菜々は全然悪くない・・・。

「・・・話って何?」

外を賛成した理由には2人になりたいと言っていた。
つまり、話があると言うことに書きかえられる。
なら、ここから話を繋げてもいいのではないか。

でも、私の甘い考えは全く菜々を理解していなかった。

「だからっ!ノれる気分じゃないってばっ!そんな会話する気も今はない!全く
 ない!あたしの顔、いつもと違うの分からないの!?」
「・・・そんな怒らなくてもいいじゃん!」
「怒ってないよ!そっちが怒ってるじゃん!!!!」
「じゃあ、菜々は何を今考えてるの!?」

菜々は、私と目を合わすことをやめた。
ななめ下を向いて・・・。

「何も考えてないよ。」
「うそつき。」
「は?」

菜々の表情は冷たくない、怒ってきている。
でも、ここは私もゆずらない。

「菜々、気にしてないって言ったじゃん!嘘言うの?私がこうやって迫るとすぐ
 逆ギレするじゃん!私は菜々に嘘つきって言われた時本音を言えるチャンスだ
 と思ったけど、菜々はそんなコト思わないでずっと悩んでるの?」

「じゃあ、今からいう質問に答えてよ」
「いいよ、菜々」

「茜、アンタあたしが心広いって思ってた?」
「うん。」
「残念、私は心広くないよ。たださ、普通の女子よりもサバサバしてるだけ。」

確かに、そうなのかもしれない。
心のどこかでは 菜々なら大丈夫 という勝手な確信があったから。

「でも、優しいよ。菜々」
「ありがとねー茜。・・・森山の好きなやつ分かったんだよね」
「えっ!?」
「まぁ、あたしのカンだったんだよねーそしたらさその子だけあきらかに文字
 の対応の仕方が他の女子と違うんだー」

ん?意味が分からない・・・?
菜々は他の子と嵐の会話をみたってこと?

「あーごめん、わかりにくかったね・・・えっとね。まぁ好きな子を当ててっ
 たわけですよー。」
「はい」

さっきの空気はいつの間にか消えていた。

「まぁ、○○?○○?とかって?んで、ある女の子の名前をあたしは出した。
 その時、3分くらいたってからようやく『違う』ってきて、なんでこんな遅
 かったか聞くと次は即答で『トイレ』ってうってきたの!不思議でしょ!」

「不思議?っていわれたら・・・不思議と言う・・かその子だよね」
「うん、あたしもさっき確信した。」

さっき?
どういうことだろう?

「菜々のさっきっていつ?」
「言えませ~ん」

ここは言わない。
その理由もまたすこし気になるが・・・

「菜々、喋ってくれてありがと!」
「お・・・う、うん。茜・・・怒ってごめん・・・」
「ううん!」

無事私達は仲直りする事が出来た。
それは正直すごく嬉しい事できっとお互いに嘘ではなく本音で話し合えた。
嘘で丸めて仲直り!ではなく、きっと今お互いの言いたいことを言ったと思うけど、菜々は心なしか私にいくつかの秘密があるようにも感じられる気がするんだよね・・・。

でも、菜々が話したくなったらでいいよね!

「ってか、外、寒かった・・・。」

玄関に入っての菜々の一言目はコレ。

「そー?気持ち良かったー!目ぇ覚めた~」
「覚めてもどうせ寝るってーストーブもうそろつくよー?あったかいよ!」
「だね~~」

ブッブッブ・・・

マネモードの携帯の音が鳴っている。
メールだね。

送信者:あらし

内容:今日、そっち迎えに行くから教室に放課後いること。
   いなかった場合は今日お前の家泊ります。
   俺の家親いねーから。
                  嵐

なんだ、コイツのメールわ!?
じゃあ待ってなくちゃいけないんだよね・・・。

チッ

私は返信をすることをやめた。

「茜、返信しろー」
「へ?」
「いや、しろよ。普通に」
「あ、うん」

正直、菜々からその言葉が出るとは思っていなかった。

内容:分かった。
   待ってるけど、何分くらいかかる?
                  アカネ

送信っと・・・。
やっぱ、なんで一緒に帰るんだろう。

最近、嵐と菜々には疑問ばかりが思い浮かぶ。

それは、やっぱり本音をいえていないから?

そして、放課後がやって来た。

「茜、バイバーーイ!タカコと帰るー」
「あ、オッケー菜々、また明日!」
「茜っちばいばーい!!」
「エミちゃん~ばいばい!明日、漫画返すねー」
「オッケーーー!」

教室の中は私1人。
空は少しオレンジが混ざった色。

こういうのもいいよね。

カシャ

景色フォルダーに登録っと・・・。
素敵な写真は私の心も豊かにしてくれる・・・そんな気がした。

そういえば、嵐からメールの返信なかったな・・・。
ラインの方がよかったのかな?
でも・・・私からいいって断っちゃったし・・・。
いまさら、言うのも・・・。

空はすごくきれいで、私はいつもそれを見ていた。
嵐という名前の子が目の前に現れてビックリした。
嵐っていう名前、外はなかなか嵐になることはなくて
嵐というよりも台風になった時は嵐がそばにいてくれたっけ。

「・・・嵐、遅いな・・・」

「・・・です!」

ん?なんか声が聞こえた・・・よ?
女の人?

泣いてる?

走って1組の前を通ったからいまいちわからなかったけど・・・
あのしずくは・・・涙?

「・・・茜、ごめん。待った?ってか待ってるね」
「あ・・・ううん、遅れるならメールしてよ」
「あ・・・そうだね。」

元気がない嵐。
あの女の人と関係あったりして・・・。

「嵐、次のテストも順位落とすの?」
「え?あ~あれは狙って落としてるんじゃないよ?えっと、次は1位だよ」
「何、自慢?」
「勉強してるから―」

え?

「変わりたいっていうのはやめたの?」

「え?美容院とか行ってたし、雑誌とかめっちゃ読んでたから順位落ちただけ
 だし、最近は勉強してるから大丈夫だよ」
「そ・・・そうなんだ」

「茜こそ、小学校のテストにも関わらず1ケタとってたことあったよね」
「な、なんで覚えてるの!?」
「いや、おもしろかったから・・・。それでもここの高校に来たんだね~」

当たり前じゃん・・・。
嵐は私の過去をしらないもん。
イジメられてた過去を。
だから・・・ココにいるんだよ。

「あっれーブリッコちゃんじゃない?」

思い出したくもない声が私の耳に入ってくる。

「ホントだー茜ちゃんじゃーーん?あれ?男といるよぉお?」
「ねー誰かぞうきん持ってないの?」
「なんで、そんなことするのぉお?男といたいんだよ~見守ろうよ~」
「え~つまんないなーチトセ」

「・・・茜、あれ知り合い?」

ダメ。私の顔を見ないで。
そんな声は嵐には届かない・・・。

身長が10センチくらい差がある私達。
だからこそ、嵐は私の顔をのぞきこんでくる。

怖くて、手が震えて・・・いや、体全体が震えるこの感じ。
今にもひざをつきそうなこの感じ・・・。
あの頃と全然変わってないんだな・・・私。

「茜、あいつらの制服見た?」
「へ?」

「バカな学校だよ。負け組だよ。」
「・・・頭でしょ?精神的に負けてるのは私」

「あぁ~ほらラブラブじゃーーん」

・・・もうヤダ。
逃げたい。

「うるさいな。いい加減にしてくれないか。」


・・・嵐?

「茜と君達の関係は知らない・・・けど、今ソレを言ってスッキリするのなら
 ずっと言っているといい。自分たちの顔を鏡でみながらね。」
「は!?」

「女性だけでいるといるということは・・・男はいないのかな?それとも、
 男子の中では君たちは実は嫌われ者?裏でコソコソやってそうな顔だしね」
「うざいんだけど!」

「わかるわかる。言うことなくなったらそうやってくる奴いるよね。」
「・・・な、なんなの!?」

「茜の幼馴染だけど。」



「嵐・・・さっきは・・・ありがとう」
「うん、茜がすごくこわがってたから・・・おかしいと思ってさ」
「へへ・・・恥ずかしいところ見られたな・・・」


「今日、俺の部屋にする?」
「へ?」
「親いないっていったでしょ」
「あ・・・そっか。じゃあ、お言葉に甘えよっかな。」

嵐の部屋は、ゲームはダンボールの中にしまわれていた。
机の上には笑っている母の写真。

シンプルで静かな部屋・・・。

そして、懐かしいにおい。

「茜の好きなコンスープでーす」
「あ、ありがとう・・・」

どうしよう。
心の中では元気なのにやっぱり怖かったな。

「何があったの?茜の中学時代」
「・・・言いたくない」

「ごめん、でもさ・・・」

言うよ・・・言えばいいんでしょ!?
守ってくれたもん・・・。
言うのが礼儀だよね・・・、多分。

「中学時代・・・私はまぁ最初は女子とも仲良くやってたんだよね・・・」
「あ、うん」

「ある日から急にいっぱい告白されてさ・・・ラブレターとかももらったの。
 でも、付き合ってはいなくて・・・好きな子もいなかったんだよね・・・。
 2年の3学期くらいからいきなり・・・女子の態度が変わったんだよね。
 『男子がいるからいいでしょ』みたいな・・・感じ。」

「つまり、それを言ったいたのが・・・」
「あの子たち・・・トラウマすぎて・・・怖くて学校も少しだけ行かなかった
 けど、こんなことしてても進まらないって気づいて勉強し始めた。
 どうせ、友達いなかったし、部活も夏で終ったからいっぱいできたんだ」

「それで・・・」
「そっ!合格したんだよ」
「そっか・・・。」

「うん・・・」

やっぱり、思い出すのもつらいのに最近は少なくなったけど
あんなの言われたらまた・・・思いだすじゃん・・・。

「俺じゃ、ダメ?」
「へ?」




「俺が、茜を守るよ」