これは、ずーっと前におこった私のお話しだよ。
「はぁ~・・・。かっこいいな・・・。」
最近、つい見てしまう相手・・・仙田タケシ君。
前に、日直でプリントを落としたときに助けてもらったんだ。
バスケ部のマネージャーで、友達の山本春輝君とすごく仲が良くて友達関係も良いんだよね!
「綾香・・・また、言ってるの・・・。」
「え・・・なっちゃん・・・なんで・・・」
「声、出てたよ。」
これは、癖。
上が兄、兄、兄・・・4人兄弟の末っ子の私は兄を見て育ったから思ったことを言ってしまうタイプ。
自分でも直そうとしてるけど、世の中癖ってそんな簡単になおらない、といつも思う。
「でも、なっちゃん・・・好きでしょ?仙田君のこと」
「・・・ぅん・・・」
なっちゃんは、仙田君の事が好きなんだ。
・・・だから、私は好きになっちゃいけない。
「・・・仙田にさ・・・告白しよっかなって最近思ってるんだ」
「え?」
「・・・いや、多分フラれるから・・・」
告白・・・しておっけーだったら付き合うんだよね?
付き合って何するんだろう・・・。
「だから、今日するっ!決心、ついた!」
「え・・・い、いきなりだね」
「うんっ!!!!仙田のトコ・・・行く?一緒に。」
え・・・。
いいの・・・かな?
「いいの?」
「もちろんっ!」
「仙田、ちょっといい?」
あれ?もう、告白のふいんきじゃない?
「お、おー」
仙田君、かっこいいな・・・。本当に・・・。
好きだな・・・・。
えっ、え・・・えええええええええ!?
私って仙田君のこと好きなの!?
えっ、いつから!?いつから!?
・・・今かな?
「・・・好き。」
響きが綺麗だな~。
そうこうしていると場所を移動し始めた2人。
現在、放課後。
やっぱり、本当に今するんだね・・・と思いつつ隠れる私。
もし、仙田君が付き合っちゃったら私って・・・。
報われないってことかな。
まぁ、片思い歴はあっちの方が長いわけですし?
仕方ないのかな?
「仙田っ!・・・の事がずっと前から好きですっ!!!!」
「え・・・和田・・・」
「・・・ごっ、ごめん!ビックリしたかなっ!つ、付き合って下さいっ」
付き合っちゃったら・・・嫌だな。
ごめんね、なっちゃん。
私は悪い子だね、友達の幸せを願えない・・・なんて。
「ごめんな・・・和田。」
「あ・・・」
「全然、気づかなかった・・・」
「・・・うち、演技上手かったかな・・・」
「本当に・・・」
フラれちゃったの?なっちゃん。
「俺さ、中学に入ってから好きになった子がいるんだ。全然、喋ったことないけど一言だけある子。」
「・・・うん」
「俺は、その子に気持ち伝えられずに終っちゃうかもしれないけど、気持ち、伝える」
「・・・ぅん」
なっちゃんの声が・・・変わった。
きっと、泣いているんだろね。
「綾香、帰るよ」
「・・・うん・・・」
「な~んで、綾香が元気ないのよっ!」
「ごめん・・・なっちゃん、私も好きかも知れない・・・。仙田君」
「うん」
私達はそこから無言でなっちゃんは水筒のお茶をいっぱいのんでた。
私は、見慣れた景色を見て悲しい気持ちになっていた。
「仙田さ、好きな子いるんだって」
「・・・聞いてた。」
「だろーね」
なっちゃんは、いいのかな?大丈夫なの?
「なっちゃん、だ・・・」
「大丈夫!それ、言っちゃダメ!」
「え・・・ごめん」
・・・大丈夫じゃない、なっちゃんは強がってる。
「なんで、告白したかって言うとさうち~引っ越すんだよね」
「えっ・・・」
「へへ・・・九州に親が転勤出てさ、結構前から話はあったんだけど、うちが反対してたんだよね。でも、親が九州に転勤したら副社長になれるって言ってきて、一週間前に決まった。先生にも言ってあるよ」
「いつ、行くの?」
「・・・2週間後。」
すぐじゃん・・・。
「すぐだね・・・。」
「うん・・・、だからウジウジ悩むのは終わってからってことで告白した」
「すごいな・・・なっちゃん」
「離れたくないんだけどね。ココ」
「・・・分からないな・・・でも、もしなっちゃんの立場だったら私もそう思うだろうな」
草がボーボーに生えている帰り道。
邪魔だったりするけど、でもこれがなかったら嫌だよ。
車がこないように歩行者専用のこの道も、なっちゃんにしたら思い出になる。
だから、なっちゃんは覚悟を決めたんだ。
「なっちゃん!私、仙田君に告白する!」
「いや、綾香待て。」
「え・・・!?」
「・・・もっとさ、ね・・・うん」
「?」
「アピールしないの!?」
アピール?
自分は良い子です・・・て言うの?え?
「しないってかできない!」
「あぁ・・・。」
納得した様子のなっちゃん。
だって『自分は良い子です』って言えなくない!?
「じゃあ、綾香も覚悟決めないとね。」
「うん!」
翌日、鼓動がドキドキはねて破裂しそうな私。
そう、思いながら私は下駄箱で靴を履き替えるため下を向く。
「たけしー、ぐっもーにんぐ」
「あ、おはよーーさん」
クラスの男子に私は『たけしー』と呼ばれる。
可愛いよねこのあだ名。男子にしてはセンスが良い。
たけしーって、仙田ダケシ君・・・みたいじゃん・・・ふふ。
あらためて、下を向く。
すると、陰になっていて暗くなった。
「ん?」
横を見ると・・・仙田君。
「えっ・・・」
「お、おはよう」
「お、おはようございます・・・」
「ちょっといいかな?」
あ・・・もしかして昨日聞いてたのバレてた?
でも、それで怒られてせっかく2人っきりになれるとしたら告白しちゃおーっと。
「竹下綾香さん、君のことが入学式のころからずっと好きです。」
「え?」
「・・・好きです!」
「・・・好き?」
好きって言ってるの?スキーとかじゃなくて?・・・好きって?
「ぷ、プリント拾った時に君と喋って俺はすっごく嬉しかった・・・!」
「え・・・覚えててくれたんだぁ~」
「う、うん!俺、恋とか分からなかったけど君と少し喋っただけで緊張して鼓動が速くなって顔が暑くて・・・すぐに分かった!これが恋だって。」
「付き合って下さいっ!・・・綾香!」
「はい。私も仙田君のことずっと見てました。」
私達はその日から付き合い始めた。
なっちゃんが引っ越すまであと13日。
「綾香って呼ぶねっ!」
「え・・・っと、私は・・・仙田君?」
「いや・・・タケシで・・・」
「え・・・」
男の子をあんまり呼び捨てにしたことないんだけどな・・・。
「あっ、タケ君はどうかな?」
「え・・・可愛いあだ名だね・・・」
「あ、恥ずかしいかな・・・?」
「いや、めっちゃ嬉しい。」
そう言った彼は本当に嬉しそうで顔を隠した。
「綾香」
「はい?」
「綾香・・・」
「ん?」
!
チュー・・・してる。
私、今・・・。
「ご、ごめん。ごめんねっ!はやかった!?」
「え・・・そ、そんなことないよ・・・・フフ」
お互いに赤面。
でも、いやじゃない。
こういうことするんだね。彼氏と彼女って。
「タケ君、好きです」
「・・・っ、俺は、もっと好きです」
「・・・っっ!わ、私の方が好きです!」
「俺の方が・・・ハハハッ」
大好き。
それしか思いつかないくらいタケ君が好き。
「今日、一緒に帰ろうよ。」
「えっと・・・」
なっちゃんは引っ越す前だからあんまり1人にさせたくないんだよね・・・。
「ん?無理かな?・・・付き合った初日は一緒に帰ってみたいです。」
「!・・・言ってみるねっ!」
「・・・というわけなんだけど、なっちゃん・・・」
「いいよ、別に。」
冷たいなっちゃん。
・・・やっぱり、怒ってるんだ。
自分より好きだった時間は短いくせに、付き合ったりするから・・・。
「んっと、おめでとー」
え?
「おめっと、今、絶対『え?』って思ったでしょ?全然・・・って言ったらウソになるけど友達だし、怒るわけないじゃん。後悔ももちろんないよ。」
「な、なっちゃん・・・」
「ん?あ、いいよ。別にー」
ありがとう。
私達が付き合って、13日後になっちゃんは九州へと旅立った。
最後には、3人で帰り、3人で遊んだ。
なっちゃんと私は約束した。
『いつか、また会おう』