・・・ありえない。

「みやび・・・今日は寝るか」
「えぇ、そうね・・・」

壁の薄いこの家は扉なんて関係ない。
嵐も聞こえてたりして・・・なんて・・・。

コンコン

「茜、勉強もよかげんにして寝てね・・・」

「そうだぞ、彼氏とも・・・」

「ありがとう。

おばさん、おじさん」


「「っつ」」

2人そろって顔が凍る。

・・・でもね、私の方がきっと苦しいの。
分かってくれますか?

「おじさんっ、彼氏とは別れよっかな」
「・・・そうか・・・」

・・・別れる?そんなの考えたくないよ。

この先ずっと隣でいたいんだ、私は。

だから、明日私は嵐にこのことを言う。

ブブ・・・

携帯だ。

菜々:どーでした?んふんふっ~

相変わらず、笑える文章ですね・・・菜々。

茜:キスめっちゃしたよぉおお^^

私は、元気なのをアピールする。
でも・・・さすが心友だね。

菜々:なんかあった?アンタが ぉおお なんて文章送って来ないけど。

・・・スゴ。スゴいよ

茜:うん、なんかあったよ。だから、明日ね菜々と嵐と私でお昼食べない?

菜々:了解。

茜:ありがとね

・・・次は嵐に報告。

茜:嵐、明日大事な話があるからお昼菜々もいるけど3人で食べない?

既読がついてからの私の心臓は・・・すごい。

嵐:今、いこっか?

茜:いや、今日さ親がいるんだよね。

嵐:俺の部屋来る?(笑)

嵐は、解ってないんだろうな。事の大きさを。

茜:明日ねー。

嵐:うっすー分かったよ

こうして、2人の会話は終った。

ねぇ、嵐・・・私の事好きでいてね・・・。

このことを聞いても・・・イトコだって聞いてもね?

・・・頬を伝う・・・涙がこぼれる。

決断したものの怖くて仕方がない。
嵐が、私の事をイトコだって認めて、じゃあやめようってなったらどうすればいいの?あの、何回もしたキスの感触は・・・忘れればいいの?

・・・あの優しい瞳もまつげも・・・。

『嵐』って呼んでも・・・イトコが呼んでるってことになったとしても・・・
嵐は私を好きでいてくれますか?

・・・もう一度キスは・・・できますか?
一緒にいてくれますか・・・?

ねぇ、嵐・・・私は今・・・すごく不安だよ?

翌日

私は、下を向いて歩いて登校した。
下を向くとウォーキングにはならないって・・・思ってる。

30分歩くと、学校につく。

「茜、おはよ」

1年1組では菜々が私を待っていてくれたようだ。

「うん・・・おはよ」

アレ?元気に挨拶したつもりだったんだけど・・・出来ないものだな。

「どうしたの?元気なくない?」
「あっ、それはお昼話すね」

「んー、了解っ。早くお昼になればいいのにね」

「どうして?」
「だって、そしたら少しでも不安なのかな?ソレはなくなるでしょ?」

うん・・・でもきっとなくならないと思うな。イトコだし。

「うん・・・そう・・・だね」

・・・菜々は少し考えていた。
私が、あまりにも元気がないからだろうな。



チャイムを聞くのは次の1つで終る。
その一つのチャイムを聞いた時、私は言わなければいけないんだ。

時間があっという間に過ぎている。

「はいっ!えっとXを代入する・・・します」
「正解ー大木。」
「ありがとぉーアハハ・・・ん?」

菜々は隣の子と喋り出した。

・・・いいな。問題とか抱えてるの?

「センセー、あと3分でチャイムなるから、次のもんだいやめよーよ」
「えー、大木ーお前ならとけるだろう?」
「ムリー」

きゃははははっ

笑い声がクラス全体から聞こえる。

「フフ・・・」

笑えないけど、後から何でも言われるのはごめんだ。

キンコーンカーンコーン♪

・・・チャイムがなり、私と菜々は席を立ち必要最低限なものを持って、屋上へと向かう。
そこには、既に嵐の姿があった。
大の字で寝ており、お弁当や水筒もちゃんと持っていた。

「おーぃ、森山」
「・・・ん、あー、終ったかーふぁー」
「何、森山・・・サボったの?」
「おぅー、自習だったからね。まぁ、いいよ、茜・・・何?」

「あっ・・・うん・・・。」

言うんだ。せーのっ

「2人は私にとって本当に大切な・・・」

「待って。」

嵐が会話を切る。ヒドイッと思ったのは一瞬で立ってドアの鍵を閉めた。

「ありがと・・・。」

「おう、続きをどうぞ?」

「・・・本当に、大切で・・・心友と彼氏なんだ。でも、昨日ね両親が帰ってきてこれからの勤務時間について話してて、お父さんとお母さんは違う職場のはずなのに、いつも時間が同じだから・・・理由を聞いたら、お母さんが『お父さんに合わせる』って言ったんだ。お父さんと一緒にいたいから合わせるって。」

・・・怖いよ。涙がスカートに落ちる。

「そ、それでね・・・うっ・・・えっと・・・」

上手く言えないけど・・・

「私、お母さんに怒っちゃって・・・お父さんの方が好きなら、私なんか産むなよって・・・ヤキモチっていうか・・・嫉妬って言うのか分からないけど・・・悔しかったのかな」

・・・そうだったんだ・・・私。
2人はご飯を食べながらもあいずちをしてくれている。
いや、嵐はごはんにはまだ触れてもいない。じっと私をみている。

「・・・そしたら、お母さんが私の事好きで産んでないって・・・言ったからさ・・・じゃあ産むなよって言ったら・・・」

「うん・・・」

・・・嵐、大好き。

「嵐のお父さんのっ・・・お兄さんとお母さんが昔、付き合っててっ別れた後に犯されて・・・それでできた子供が・・・私なの」

涙が大量にあふれて、視界はまるで海の中にいるように思える。
それでも、涙は止まらない。

最初に口を開いたのは・・・菜々だった。

「・・・それって・・・アレ?イトコって事?」

「うん・・・そうだと思う。嵐と血がつながっていることになるから」

嵐は・・・もう、私をみないでただ今怒っていることを懸命に理解しようとしてる。

「俺・・・と、茜・・・イトコだったんだな・・・」

「・・・うっ、・・・うん」

涙はまだ止まっていなくて、
嵐は、今も理解しようと苦しんでいて、
菜々はどうフォローすればいいかを・・・考えている。



「・・・ごめんねぇええ・・・嵐ィィイイ」


イトコでごめんね。
幼馴染の恋人なんじゃなくて・・・イトコ同士で付き合ってるんだね。

「でも、戸籍・・・関係ねぇーよな」

「・・・そりゃあ・・・そーだよっ!茜」

・・・それでいいの?

「嵐・・・は、それで・・・いいのぉお?」
「ん?何が?」
「私達・・・血ィ・・・つながってるんだよ?」


「だから何?
そんなん関係ねぇーじゃんっ!
俺はお前が好きだっ!その真実を知ったのは俺らがこーやって付き合った後。
それなのに、『血がつながってるー』とか関係ねぇーじゃんっ!」

・・・嵐。

「しかもさ、俺ら高校生だぞ?もう冬も終われば高2だぞっ!
真面目に結婚とか考えてるだろっ!俺とお前が血ーつながってるんだったら



本当の家族になれるじゃん」



・・・本当の・・・家族?

「普通さ、子供は血がつながってるけど親は血がつながってないじゃん?俺らはそれがねぇーってことじゃん!」

・・・血が・・・全員繋がっている・・・かぞ・・・く。

「茜は?俺の事どーなの?血がつながっていて、イトコだから・・・別れる?」

・・・嫌だ。ヤダ。

「俺は、お前がいればいいんだよ?」

「うん、大好きっ!私の方がっ!」

・・・もし、世間にコレを知られてしまったら恥ずかしいかもしれない。


それでも、こんなに優しく、温かく輝いている人を私は好きなんです。
大好きで・・・どんなに涙を流しても嵐は受け入れてくれる。

イトコだけど、戸籍上全くの血の繋がりのない幼馴染の嵐。

そんな嵐に私は恋をしているんです・・・