カキカキ・・・

山本くんにもう一度告白されて数十分が経過した。

あと、数行で今日の宿題が終わる・・・けど・・・
私より最初にやっていた嵐はまだ終らないのだろうか。

そうこう考えているうちにノートの一番下の行まできた。

「っし、おわりー」

宿題終了。
ん?1時間以上たってんじゃん!
約束の 1時間くらい はとうに過ぎていた。

ヤバッ!

私は急いでかばんに物をつめて3組に向かう。

ごめんねっ、嵐!!

3組にいくと静かで綺麗な光景が私を待っていた。

夕陽に染まる嵐。寝ている。
長いきれいなまつげがまたキラキラしている。

これは・・・写真におさめたい。

パシャ

後で、嵐に撮ったことをいおう。

「今、撮った?」
「へ・・・あ、はい。ごめんね・・・起きたら言おうと思って」
「ん、別にいいよ・・・。」

かばんはちゃんと準備されているようで・・・。

「嵐、いつ宿題終ったの?」
「えっと、結構前かな。」
「うっそ!言ってくれたらよかったじゃん。」
「いいのいいの、俺も睡魔と言う悪魔に襲われて戦って負けていたから」

つまり、寝ていたからいい ということで解釈してもいいんだよね?

「そっか・・・嵐、家ではお父さん来るの?」
「あー、最近はちゃんと帰ってくるよ。会社でも副社長になったから家でも仕事してもいいって許可がでてさ」
「へぇ~、良かったね」

私と嵐は家庭の話をしながら帰っていく。

「茜わ?最近、親の顔見たの?」
「ううん。でも、声は聞いたよ。一昨日、すぐに家にかえってね・・・その時、お父さんとお母さんの声が聞こえたんだ。仲よさそうだった」
「そっか、茜も良かったね・・・とは言えないかな」
「んー、そだね。ごめんね、何か空気くらくしちゃったわ」

家で1人なんて慣れているもんだ。
怖い番組とか夏、ほとんどされるけど絶対に見ない。
1人だもん。
ビクビクしていなくちゃいけないでしょ。

嵐は、お母さんが死んでもお父さんが帰ってくるからいいけど、私的にお父さんもお母さんも死んだも同然だよ。
たまに、声が聞こえる。
つまりさ、幽霊の声が聞こえる と同じなんだよね。
お互いの顔も何年も見てない。
それでも仮書は 家族 。
お父さん お母さん は、本当に仲良くても・・・私と両親が血を繋がっていても私はどうしてもこの家を好きになることなんてできないんじゃないのかな。

「茜ーお前、1人で考えすぎ。」
「あ・・・ごめんね」

「先生に俺が注意されてた時もなんか考えてただろ。」
「あ、まぁ・・・考えてたね。私ってそんな顔に出るかな?」
「う~ん・・・出るな。出てる。わかるしな」

そんなに出ちゃうんなら、嘘とか付きたいとき嘘付けないよね。
なんか悲しいな・・・。

「今日さ、一日目だよね」
「うん・・・」
「12月8日につきあったって事で」
「うん」

嵐は、1人の女子と付き合ったけど私は違う。
私は、昨日付き合ったばかりの事を別れている・・・。
私って・・・タラシってヤツなのかな。

「どした?」
「な、なんもないっ」

また、顔に出てたよ・・・。バカ。

「1人で考えすぎだってば」
「・・・分かってるよ・・・でも、嵐には言えない」

言えるわけがないでしょ。
彼女が、タラシみたいなことして・・・。

「いってよ。彼氏だよ?幼馴染でも友達でもないんだよ」
「・・・お、幼馴染の彼氏だよーだ」
「はいはい」

でも、これ以上・・・嵐に心配させたくない。

「嵐・・・私ってタラシなのかな・・・」
「はぁ!?」
「・・・だ、だってさ・・・昨日付き合って別れて今、嵐と付き合ってるじゃん?コレってタラシの部類に入るのかな?」

・・・嵐、震えてる?なんで・・・?

「ぷぷぷぷ・・・」

え、笑ってたの。ひどくない!?

「タラシっていうのは、誑しって書くんだけどって言っても言葉じゃ伝わらねーか・・・まぁ、意味としては だます あざむく というのが入ってくるんだよ」
「う、うん?」

「つまり、お前は山本をだましたのか?『私も、好きぃ』なんて言ってないんだろう?その時点でお前は山本をだましたことにはなっていないし、多分だけど山本もお前の気持ちに気づいていたよ。」

・・・だます。
それが タラシ?
少し違うような気もするけど・・・

「ってか、嵐!何その声のマネ!そんな私、変な声じゃないし!」
「え?うっそーいつも『嵐ぃいー』って言ってるじゃん」
「あ・ら・し って呼んでるんですけど!」
「えええー」
「何よ!!!!!」

小さな悩みってことは分かったよ。
嵐が笑っているなら・・・。

「じゃあね、嵐」
「おぅ」

私達は、いつの間にか家についていてお互いの家に入っていく。

私が部屋に入った数秒後・・・

ピンポーン

「茜!」

え、嵐?なんで?どうしたの!?

ガチャ

「何?」
「ライン、教えてよ」
「はぁ?明日でもいいじゃん」
「今来たんだから今にしてよ!」

私は「はぁ~?」とか言いつつも携帯をポケットから取り出してラインを交換した。

「ありがとな」
「うんー迷惑だけど。」

「じゃあな」

ガチャ

私はその場で座る。

どうして、私は素直になれないんだろう。
嵐のラインをもらって嬉しくても、私は「ありがとう」という文字も言えない。嵐はちゃんと言ってくれるのに・・・。嫌だな。
こんな自分。

「素直になりたい・・・それだけなのに」

声に出す。1人なら、言えるのに・・・。
どうして、嵐は言えるのかな?
私には・・・声に出す勇気すら・・・ないのかもしれないの?

それでも・・・私だけが悩んでるんじゃなくて、嵐も私の事を心配してくれている。

・・・昔、先生が言っていた。

『口ではなく、行動で示せ』

今、今がその時だよ。

鍵を開けて、隣の家に行こう・・・。