「……なんですよー!」

稽古のあと片付けをして部室に入ろうとすると蔓見の楽しげな声が聞こえた。
-コンコン。
「はーい!どーぞ!」先輩の許可を聞いて扉を開ける。
「失礼します、お疲れ様です!」

お疲れ様~。といつも通りバラバラと聞こえる返事。
ただ、少しいつもと違うのは、蔓見が話すヒトのこと。
「それで、かのだけ袖のボタン外して、中から下に着てるロンTの袖出してるんですよ!
しかも、スカート膝の真ん中ですよ!」

かの-永瀬かの私と同じ中学で、仲は良かったと思う。イジメが起こる前は。
私はただ蔓見の告げ口を聞いていた。
友達でもない人を、助ける義理もない、これ以上蔓見とごたつくのは面倒くさかったたから。
この時、止めていたら……。私はただ自分が大切で自分の保身が第一だったから、大切にしたかった人も失った。

この告げ口から少しして、かのが先輩に目を付けられたと知った。