『俺だって男だよ』
その言葉が家に帰っても抜けない私は、沙羅に電話することにした。さすがにこのことは両親には言えないし・・・
『ガチャ』
「もしもし?」電話に出た沙羅はだるそうだ。

「もしもし美晴だけどね、沙羅はキスをしたことがある!?」
「ぶっ!?」
沙羅は電話越しに吹き出す。あたかも.∵・(゚ε゚ )!という顔文字ができそうな位の勢いだ。

「美晴?いきなり、なんちゅーこといってんの?」
怒りの様子も見えるが今はそれどころじゃない。
「実は、星也さんにキスをされそうになってつい、手をはたいてしまったの・・・」
「「・・・・・・・・・・」」
しばらく時間が流れる。
「あ?てめえ、何でしなかった?」啖呵を切る沙羅。
「だって恥ずかしいから!?」
私の言い訳に沙羅は電話越しでも、分かるくらい引いた様子だ。
「キスをしたことがあるかって、聞いたよね?あるよ?」
「へ?」
私は、沙羅はしたこと無いと、思っていた。かわいいのに男嫌いだから・・・
まさか!
「沙羅まさか!女の子と!?」
「違うわよ!」
叫び声がキイーンと耳元でこだました。
「私だって男性とキス位あるわよ!百合じゃない‼」
わかったわかったと必死でなだめる。
「え?まさか美晴ファーストキスまだじゃないよね?」
「・・・・」
「あははははは!?」
今度はムカつく声が向こうから聞こえ、電話を切りたいがここは我慢だ。

「悪かったわね!キスをしたことが無くて‼」
「あはは!ごめんごめん!?でも、美晴はキスをされそうになって嫌だった?」
「へ?嫌じゃないよ?」この気持ちだけは明確だ。
「じゃあ何でひっぱ叩いた?」
「何でって恥ずかしいから・・・・」
語尾を濁すと小学生か!?とつっこまれた。
「美晴は今まで結構恥ずかしいからってカップルらしいこと避けたんでしょ?それは怒るよ彼氏さん」
「したよ!カップルらしいこと!」
例えばと聞かれ自信満々に手をつないだ!
と答えたら、お前は運動会で好きな人とダンスで手を繋いで照れ隠しをする小学生男子と同レベルとまた怒鳴られてしまった。