「ただいま・・・」
家に帰ると、今度はすき焼きの匂いが台所から香る。
お母さんが私が帰ってきた事に気付いたのか、私のもとに駆け寄った。
『美晴‼誕生日おめでとう!』
お母さんは楽しそうだ。
孤児の生年月日なんて、あくまでも推定であり誕生日も拾われた日。
だから私は、みんなより年上かも知れないし、年下かも知れない。誕生日も本当は違う。
そんな誕生日を祝ってくれている人がいるだなんて幸せな事なんだろう。
なのに私は、そんな思いを裏切った‼
「お母さん・・・・私、皆の好意を裏切ったの!どうしよう!」
突然泣きつく私にお母さんは深く踏み込まずに、こう言った。
『美晴、何があったのかは聞かない、けどね、本当にあなたの友達なら大丈夫だから』

「へ?」
お母さんはにこっと笑うと、頭を撫でた。
星也さんの手とは違う小さくてしわくちゃな手だけど温かさだけは星也さんに負けないくらい温かい。
「さ、美晴、ご飯よ?今日はすき焼きとケーキだから美晴の好物ね」
「うっ!うん!」
台所には温かいご飯と豪華なケーキがテーブルに並んでいた。
この家に拾われてよかった。
そう私は、心の中でつぶやいた。