『母さん!やめて!』
何度も何度も同じ言葉が繰り返される。

そういえば、私は星也さんの気持ちを理解しようとしていただろうか、私は今幸せだ。コインロッカーに捨てた親は確かに憎い。だけど、どこか過去の事と思う自分さえいたのだ。しかし、星也さんは今性的虐待を受けている。もし私がコインロッカーに捨てた親が捨てずに私を育てていたら?
親が私を愛さずにそのまま育てていたら?

『ゾクッ』血の気が引いていく。私も同じだったかもしれないんだ・・・・・
でも、だからといってこの人から背けていいの?

確かに私は、幸せだ。けれど親にトラウマを持つ子供の気持ちなら・・・

『私にだってわかる!』
私は、床に倒れこんだ星也さんの耳元でこうささやいた。

『大丈夫、大丈夫』
言葉に反応したように、一瞬星也さんがこちらを見た。
『星也さんは我慢をし過ぎです!私も辛い時は一緒に立ち止まってあげます」
『ガッ』星也さんが私の手を掴んだ。
「お前に何がわかる!」
息をあらげ、叫ぶ星也さんはあたかも子供の様だった。
ああ、この人は今まで一人で生きてきたんだ。でも、そんなことはさせない!