「ほし・・・やさ」
ポカーンとする私に、星也さんはにっこりと笑った。
「美晴ちゃん、駄目だよ?君はまだ高校生なんだから?狙う男もいるんだよ?」
耳元で、そんなことをささやかれる。
男性らしい低い声が余計私を赤くさせた。
落ち着け‼自分‼と暗示をかける。
また、からかわれているだけ!妹扱いされているだけ!
しかし好きな人から抱きしめられて赤くならない乙女が、どこにいるだろうか?
そんなことが頭をぐるぐると回転する。
しかし、もっと大変な事に私は、気づいた。

(あれ、星也さん力が抜けている?)
最初は演技だからだと思うが、わざとらしく若干強めに抱きしめられた。しかし、今は全く力が入っていない。
『バタっ!』
「星也さん!?」
星也さんはパッと手を離しそのまま床に倒れこんだ。
「大丈夫ですか!」
揺さぶるが返事が無い。
「~~~~」
「?」
星也さんの口が、かすかに動いた。
最初は何を言っているか解らなかった、が、耳を澄ますとそれはたったの一言だった。


『母さん!やめて!』

「え?」
彼の顔は初めて恐怖と、悲しみに満ちているような顔で今まで見てきた彼は偽物なのかと思うほどだった・・・