「おっはよ!美晴!」
朝から相変わらずなテンションの友人は、長いポニーテールを揺らし駆け寄ってくるのが朝の日課になっていた。「沙羅、おはよ」この子は『中本沙羅』テニス部キャプテンで顔もかわいい。お陰で私より1000倍モテるため、彼氏は作らない主義の沙羅に玉砕する男子が、あとをたたないのだ。
「美晴、なんか悩んでる?」
「へ?」
沙羅が突然心配そうに、首を傾げる。
「・・・まさか、恋?」
「かも知れない」
「ぇ?」
私の返答がよほど意外だったのか沙羅は硬直している。
「美晴が恋だと・・・!」
側にいた男子まで顔を引きつらせていた。
「あり得ない!?変人で‼恋より鯉の解剖に興味がありそうな美晴が恋!?」
「鯉の解剖に青春を捧げる乙女が逆にみたいよ・・・」
クラスメイトの正直すぎる意見に私は、脱力してしまった。
確かにいままでの私は、
・全国模試でそこそこいい成績
・変人扱い
・理系
・読む雑誌は『週刊生物学』

あ・・・・鯉の解剖になるわなそりゃ・・

「で、どんな悩み事?」
沙羅が顔を近づける。
「えーと、好きか分からない人に風邪引かせたかも知れないんだ・・・」
「はい?」沙羅がぽかんという顔をする。
「だから、好きか分からない人に風邪引かせたかも知れないんだ」
「・・・・・まあいい、聞こうじゃないの!」沙羅はため息をついたあと、
にっこりとほほえんだ。話せの合図らしい。

「実はチャットをしている男性と会ったんだけど、その人にあなたの言葉でドキドキしたりするとか不整脈かもって言ったら真っ赤になっちゃて!やっぱり風邪かな‼」

『・・・・・』
「どうしたの!みんな‼」
クラスメイト達はみんな顔を引きつらせていた。
「美晴、それは恋だと思うし、完璧口説いてるよ?言葉的に」