ことの始まりはまだ私が5歳くらいのことだったと記憶している。
2歳年上の大好きな兄の言葉からだった。
買い物帰りの車の中。
母親は買ったものを家に持っていって、車の中には私と兄のふたりだけで残っていた。
他愛もないことを話していたのか、まったりしていたのかは覚えていない。
ただ、唐突に兄が言葉を発した。
「俺たちって、本当のお母さんとお父さんに捨てられたんだよ」
何言ってるの、ってその時は純粋にそう思ったんだと思う。
今まで、母親と父親と一緒に暮らしてきた。
ふたりともちゃんといるじゃないのって、私は笑いながら思っていた。
だけれど兄は至って真剣だった。
「"お姉ちゃん"が俺たちを産んだんだよ」