「ふー…終わった」
包帯を近くの棚に放り投げた先生が、ドサッと私の隣に腰をおろす。
少し動けば、肩がぶつかってしまいそうな距離。
…ていうか、さっき…!
ふとさっきまでの光景が急に蘇ってきて、思わずつかまれていた手首をギュッとおさえた。
「…なに、赤くなってんの?」
先生がそんな私を見透かすように、私の顔を覗き込んでふっと笑う。
…な、なんか…私服姿っていうのもあってか、いつもと雰囲気違う…!
「て、ていうか何でここに…?」
近すぎる距離をごまかす様に顔を逸らしながら、なんとかそう聞いた。
「何でって?」
だけど先生から返ってきたのはそんなキョトンとした声。
「だ、だって先生やめるんでしょ…?なんか忘れ物とか?」
「…まー、そうだな。忘れ物とり来た」
そう言って優しく口元を緩めた先生が、そっと私の頬に触れ視線をあわせた。
「…っていうのは嘘」
「…は?」
悪戯っぽく目を細めた先生が、そんなことを言う。
「う、嘘って…じゃぁ何でここに…」
「全部うそ」
「……はい?」
「俺、教師やめないから。ヨロシク」
「……は」
はぁぁ!?