「でも。あのとき....いじめて、ごめん。」

何も言えなかった。

「蒼井が好きってことはうちらライバルだから。」

「うん。負けない。」

フッと笑って

「私も。」

と言った流々南。

なんでかな。許さないって思うのに。
今さら謝るなって思うのに。

なんでか心は軽かった。


あれ?....今、ほんの一瞬だけ、交わった...?

肩の力が、ストンとぬけた。

「ねぇ....」

今度は私が話しかける。

「忘れないでね。」

「は?」

意味が分からないという顔をした。

「桜花のことずっと、忘れないでね。」

私の真剣さがつたわったのだろうか。
コクンと頷いてまた掃除を始めた。

ずっと心に引っ掛かっていたものがやっととれたような気がした。


私と流々南はいつまでも平行線。

お互いに嫌いで。


私たちは、それでいいと思えた。

ふたりだけの教室。

さっきまでの気まずさはもうない。

私は寧ろ、この時間が。
とても心地よかった。