彼が住んでいるスイートルームの一室はもともとは社長の彼女が寝泊まりできるように創られていた。なので、他の客室とは別の場所にあり同じフロアには彼女の社長室がある。


「咲壱ちゃん、どうしようもないやつでごめん。」

彼女はうつむく。


彼はスマホを耳に当てながらスーツを着て身仕度を終わらせた。

「今いく。」

そういってドアを開けると彼女が立っていた。


「...っ!!!麗子さん」

彼は一瞬驚いたが、すぐ彼女の腕を掴みを部屋のなかへと連れ込んだ。そして思いっきり強く抱きしめた。強く唇を結んだ。


「咲壱ちゃん、仕事行かないと遅刻よ。」

彼女は抱きしめている彼の耳元でささやいた。


「いつも以上に傷ついた。」

—まるで、私を諦めてって突き出されたようで。


「ごめんね。」

彼女は彼の頬を両手ではさみ、彼の目をまっすぐみた。

「もうしない。」

そういって彼女のほうから、数分に及ぶ長いキスをした。


—ずっと、ずっとこうしていたい。時間を恨む。