「いってきます。」「いってらっしゃい。」

今度は反対に、


「いってらっしゃい。」「いってきます。」


—この言葉をかけあうだけで嬉しくなる。それと同時に一緒に住めない現実に向き合わされたりもする。本当に彼女は旦那さんに向けてこうやって言葉をかけあっているのだろうか。なんで俺だけの麗子さんじゃないんだ。

彼はこぶしを握り締めながら笑顔で彼女と別れた。


—今日は麗子さんが俺を少しでも必要としてくれていることを感じた。


それだけで彼の心はほっこっりして、いつもの会社への道のりも心なしか足取りが軽やかな感じがする。



==会社



「三浦、新規の案件!ちょっと担当任せてもいいか?」

上司の課長のもとへ早歩きで向かう。


「何でしょう?」

彼は渡された書類を手に取り目を通した。



【YU-NA-UP】と書かれた会社名。

「ユナップですか、最近若い人に人気の化粧品会社ですね。」

渡された書類をパラパラとめくりながら内容を把握した。


「さすが、三浦も若いな~。そこ来週の月曜9時アポだから内容まとめてよろしく。あと挨拶の電話もな。」


「わかりました。内容まとめ終えたら確認お願いしてもいいですか。」

課長は「当たり前だ、任せた」と笑顔を向けた。



彼はさっそく来週訪問することになったユナップの経営者と挨拶の電話を終えた。


—そういえば、経営者の赤羽社長の赤羽って最近どっかでも耳にしたような…気のせいか。