ホルンだ。
ホルンの吹き主は、2年生の永徳真優だ。

永徳さんは黒髪に茶色がかった髪の毛を、下目のサイドで一つに束ねている。
目付きは少しだけ悪く、機嫌が悪いとさらに悪くなる。見られたら泣きだしたくなる程だと言われている
制服は、ブレザーの下に黒セーターを着ており、スカートは膝上でそこまで短くはない方だ。タイツを履いている。そこらの女子より、まともで部活熱心だと聞く。

永徳さんは来年度、パートリーダーになるのではないかと思っている。

それは、部活熱心なのもあるが、先輩に好かれやすく、印象も良いので高い評価を得ている。
それに対し、先生からの印象は三学期中盤まで悪かった。
その理由は話すと永徳さんに半殺しにされるから辞めておこう。

そんなことを思っていると延徳さんが
「おはよう。なぎちゃん、髪型変えたんだ。」
ホルンを脇に挟み、こちらに視線を向け、あからさまに作ったような笑顔で挨拶をしてきた。

まるで
‘さっさと練習しろよ下手糞が’

と言いたいことを隠しているようだ。

なぎちゃんというのは、私の呼ばれ名である。
雨宮 凪紗。私の名前だ。
凪に沙とかいてなぎさと読む。
部活ではトランペットを吹いている。


私は部活なんて、皆と喋って楽しく過ごせればいいと思っている。
だが、永徳さんは、違うんだ。