世界が凍るかもしれない。
そんな目を僕に向けながら土方はいつもよりワントーン低めの声で問い詰めた。
土「さて、攫われた仲間を必死に探していたら総司を突然助けるわ、敵と一緒にいるわ、その後なぜか会津で女中をやっているわ、摩訶不思議な馬鹿がいた。誰のことだかわかるか?」
『…。』
土「そこに、直って、全部、話せ。」
逃げられない。
息を吸い込み喋るしか方法はなかった。
『…というわけだ。』
土「ちょっと待て。話についていけねぇぞ。…壬生…いや…新撰組がお前の物?あれは生き別れの双子の弟?しかもそいつは長州の主?」
『そうだ。那津にお前らを消させない様に僕はあっちにいた。邪神を復活による悲劇はもう見たくない。』
全部と言っても、病気のこと、平成への帰り方は話さなかった。
話すべき事ではない。
外では雷がまだ鳴っていた。
その度に体が少し竦んでしまうがなんとか堪える。
ふと、土方が呟いた。
土「…お前は。」
土方がきつく膝の上で拳を握るのが見えた。
土「お前は何故俺逹を信用しないんだ!」
『信用している!』
信用していない訳がない。
新撰組の皆んなは仲間で、信用している人達だ。
土「違う!お前は、仲間を頼らず、信用せず、一人で突っ走った!俺達を信用して頼ってくれれば良かった物を!」
ハッとした。
図星だった。
否定の言葉の代わりに口から謝罪の言葉が溢れ出る。
『ごめん。ごめんなさい。ごめん…。』
ポタッと畳に水の染みが一滴落ちた。
また一滴。
そして一滴。
雨が屋内に降るわけはない。
ああ、
僕の………私の涙か。
私、なんで泣いているんだろう。
これではまるで逆だ。
『ひっく…ごめんっ…なざいっ…私にっ…泣く資格なんかっ…無いのに…。』
すると、視界が大きな影で暗くなり、暖かい温もりに前から包まれた。
土「……ガキは泣いとけ。」
頭をグリグリと大きな掌で撫でられ安心感が増す。震えは既に止まっていた。
『…ガキじゃ…ない。』
嗚咽を堪えやっと出たのは小さな反論一つで、
もうどうしようもなかった。