那「今日の所は吹悠を取り戻しましたし、これを持って帰って良しとしますか。」


そう言うと那津は沖田の刀をすれ違いざまに奪い屋根の上に飛び上がった。咄嗟に沖田は手を伸ばすが那津には届かなかった。


沖「返せ!刀は持っていってもいいですから!だから吹悠さんだけは…!!」

『僕は戻らない。』

沖「…え?」

『僕に関わらないでくれ。』

お前達の為なんだ…


その一言を飲み込むと吹悠は那津に行こう、と声をかけた。

那津は猫になった吹悠を抱え直すと跳躍し屯所を離れた。

那「吹悠!」

『は、はいいい!』

移動中、突然那津が声をかけるので驚く。見上げると狐面には隠れているが怒っているのが見えた。

那「心配したんですからね!」

『…ごめん。』

すると那津は突然ある屋根の上で止まるとゴソゴソと懐を探りある物を取り出し、無言で差し出してきた。




カステラ?突然の?

那「これは坂本さんからもらった貴重なお菓子らしいです。あげます。」

『いいのか?那津が貰ったんなら那津が食べなよ。』

那「だーかーらー黙って食べてくださいよ!」


無理矢理口に押し込まれたカステラを咀嚼し飲み込む。

甘い。
これは彼なりの仲直りをしようとしているのかな?


そう思うと自然に少し笑いが出てきた。


那「…笑わなくてもいいじゃないですか。」

那津は少し顔を赤くするとまた移動を始めた。