しかし…


反応がない?!?!まさか…。いつもなら直ぐに反応があるのに。


だが、菊宗に以前、教えてもらった事がふと頭をよぎった。



移し身の術。使用者と対象者の体の状態を交換できる。


というものだ。




しょうがない。僕はいずれ平成に帰る事になるのだから、治療なんてその時にできる。けれども沖田は…


沖田の手を取り、その手を包み込むように両手で握った。そして力を流し込むのと同時に相手の力を奪うイメージを強く思い浮かべた。





すると、

『ゲホッゲホゲホゲホ‼︎』

胸の奥から咳が途端に込み上げてきた。口を押さえた手を見ると血が付いていた。

沖「あれ…咳がピタリと止まって…待て、お前逃げるな!」



逃げるなと言われて逃げない馬鹿がいるわけないだろ。


吹悠は咳をしながら二階の窓から飛び出すと屋根と屋根を飛び越え那津達の元へと帰って行った。