その時、吹悠の耳が外のただならぬ音に気がついた。
京は治安が良くないために、夜の人通りはないに等しい。
しかし聞こえるのは大人数がザッザッザッとこちらに近づく音。四神の力で得た強力な五感を最大限に生かし耳をすますと刀が歩くたびにカチャカチャと鳴っているのも聞こえた。
ーーやはり
目をつむり、耳をすます吹悠に坂本は訝しげに聞いてきた。
坂「澄野、どうかしたのか?」
『刀を持った集団がここに近づいて来ます。多分10人程。後もう少ししたらここに着きます。』
高「あちゃー多分壬生浪士組かぁ。狙いは多分俺らじゃないね。隣の奴らだ。あいつら活動をちょっとおおっぴらにしすぎて、目ぇ付けられてたもんね。」
…壬生浪士組。
今、一番会いたいけど会いたくない人達。
坂「じゃあ、店主に行って裏口から出るか。」
早くここから離れなければ。
でも、ここを離れ見て見ぬ振りをすれば
沖田は血を吐き、労咳を発症する。
平助は額に深手を負う。
僕が今屯所を離れているのは皆を護るため。
池田屋の敷居をまたぐ直前で吹悠は立ち止まり行った。
『ちょっと僕用事が出来ました。先行ってください。あ、壬生浪士組には絶対戻りませんし、なんなら外から見張っててもいいですよ。』