「……わたし、塚原さんに教官やってもらいたいです、ブレーキを踏むタイミングも、……塚原さんにっ教えてもらいたいです」
「塚原さんの……優しさを、教えてください」
「──────」
塚原鬼教官の、目が見開いた。
ひどく動揺しているように見える。
「……俺は、自分で自覚しているくらい、口が悪い」
「……」
「実際に生徒をストレスのはけ口にしているのも、事実で、我ながら酷いと思う」
「……はい」
「でも、それは俺の信念だから、曲げるつもりはない。これから先も厳しくするのに変わりはないし、むしろ以前よりも厳しくなるかもしれない」
「……はい」
「それでもいいなら、───咲都」
「今日はもう遅いから、車に乗って待っとけ、送ってく」
初めてみせる、笑顔。
投げ渡される車の鍵。
私の心臓に悪いみたいで、さっきから音がドキドキすごいよ。
こんなの、教官に溺れてしまいそう。
【① さいあく、鬼教官】end.