「───塚原さん」
「……」
彼は自分のテーブルで、顔に似合わずのんきにエビせんを食べていた。
私が呼びかけると、そっと振り向く。
「……なんの用」
鋭い目つきも低音ボイスも、健在。
「───暇そうにしてるなら、私の指導してくださいよ」
「……は」
「エビせん食べてるくらい暇なら、私の」
「えっ、おいちょっと待てどうした」
急に慌て出す、塚原さん。
「……本当の優しさを、教えておいて、……逃げるだなんて、……ずるいじゃないですか、塚原さん」
普段、冷静沈着の鬼教官が慌てている。
きっと、それは、私の溢れ出る涙のせい。
塚原さんは、何なんですか。どこまで鬼畜なんですか。
散々構っておいて、放置なんて、酷いじゃないですか。
散々人の心を揺さぶって、避けるなんて、酷いじゃないですか。