「……琉偉(るい)こっち来なよ」
「うん」
だから、わたしと同じニオイがする春人(はると)を初めて見た瞬間、体に電流が走った気がした。
黒髪の無造作ヘアは、特に手入れもされていないのに、艶があって。
澄んだ切れ長の瞳は、常に眠そうだったけど、その瞳に釘付けになる。
極めつけにこの人の周りだけ時間の流れが遅いんじゃないかってくらい、のほほんとした雰囲気は、わたしの脳内を刺激した。
それから特に会話もしないうちに、春人に「多分俺たちはすごく合うと思うんだ」と言われ
わたしも「そうだと思ってた」って答えて、あまりにも曖昧だったけど、きっとその言葉を合図にわたしたちの関係は変わったんだと思う。
「好き」っていう愛情表現も、「付き合おう」っていうハッキリとした言葉も、何もなかったけど、これがわたしたちにとっては心地がよかった。