本当、疲れる。
鬼教官の塚原さんにあたる日は(ほぼ毎日)心身ともにしぼられる。やばい、本気で。
「……ふぅ、今日も疲れたー」
「咲都はすごいよ、本当。チャレンジャーだよね、いまだに塚原さんNG出してないの多分咲都くらいだもんなー」
私は、15分の1の確率が、やたらと多かった。
他の人は全然担当にならないのに、私はいつも悪魔で、ちょっといやかなり不信感を抱いていた。
だってそれはもう必然としか思えなくて、もしかして事務員さんに嫌われてしまったとしか考えられないくらいひどいものだった。
だけど、人生における、壁なのだから。とずっとずっとあの罵声にも耐えてきた。
──途端。見えてくる、事実。
チャレンジャー?わたしが?
NG?何それ、聞いたことないよ。
「自分の苦手な教官を、事務員さんに言えば、こっそり担当外してくれるんだよ」
「え?」
「私も、塚原さんには申し訳ないんだけど、NG出してるんだよね。あの心をえぐられる感じは耐えられなくて」
「……はい?」
人生の、壁だと思ってた。
私に与えられた、試練だと思ってた。
だから、越えねばならないと、思ってた。