「────春、人なの?」
「うん、そうだよ」
彼もわたしも気まぐれで自由な人だった。人の事情に干渉したことはないし、自分のテリトリーを乱されると、気に食わない人だった。
だけど、今日ぐらいは、許されるでしょう。
「────どこに、行ってたの?」
いきなり姿をくらまして。わたしのことが嫌になって出て行ったと思ったら
ひょっこりと顔を出すし、本当今までどおりに接してくるし、すぐニオイを嗅ぐし。
どれだけわたしが心配したかを、あなたは知らないでしょう。
行方不明のニュースが出るたび、どれだけの不安にかられたか、あなたは知らないでしょう。
「────置い、て行かないでよっ」
ごめんなさい。こういう面倒なセリフを、あなたが何よりも嫌うことをわたしは知っているけれど、ごめんなさい、言わせてください。