「あ、あれ………は……?」

「あれは、幻魔(ゲンマ)だ。気を付けろ、アレは人を喰うぞ……」


ルークは警戒をさらに強め、剣先を幻魔へと向けた。


幻魔…………
この世界には、そんな化物までいるの??


夢なら早く覚めてよ………
あぁ、でもこれが本当に夢なら、の話だけど。



風も、夜の匂いも、そして、繋がれた手の強さ、温もりも現実のようで、夢と簡単に言い切れるほど、この世界を否定もできなかった。



ーボコボコボコ……

『………誰モ……助ケテ………クレナイ…』



幻魔は何かを言いながら、一目散にこちらへ向かってくる。



「ちょっ、幻魔って言葉を話せるの!!?」


なお、気持ち悪いじゃん!
でも、「誰も助けてくれない」って………何か、悲しい。


「はぁ??話せるわけねぇだろ、さっきから気持ち悪い音立てながら近づいてくるだけだろ!」


「えっ………?」


え、嘘でしょう??
今、確かに声がしたのに………?
私の空耳??



私は幻魔を見つめる。



『助ケ……テ………』


「っ!!ほら、やっぱり喋ってる!!」


「助けて」ってちゃんと聞こえた。
この幻魔が言ってるんだよ!!